うわべだけ?「SDGsウォッシュ」について知ろう!
地球環境や社会に関するざまざまな問題が顕在化している今日、世界で重要な指針となっているのが「持続可能な開発目標」、通称”SDGs”です。消費者の意識の変化に合わせて、多くの企業がSDGsを掲げた積極的な取り組みを進めていますが、残念ながら中には消費者を騙す「SDGsウォッシュ」企業も存在しています。「SDGsウォッシュ」とは一体どんな概念なのでしょうか?
そもそも”SDGs”って何?
最近ではテレビコマーシャルでもよく見かけるようになったSDGsですが、改めてその概要を見てみましょう!
”SDGs”、正式名称”Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)”は、2015年9月の国連サミットにおいて全会一致で採択された国際目標です。地球環境・社会を顧みないこれまでの行動様式を改め、2030年までに持続可能でより良い社会を構築することを目指しています。
【特徴】
- 国際的な社会問題を対象とした17のゴール(左図)
- 問題ごとに設定された169のターゲット
- 先進国を含むすべての国の普遍的な目標
「○○ウォッシュ」の意味
SDGsを大まかに把握できたところで、早速本題に入ります。皆さん、「SDGsウォッシュ」の「ウォッシュ」の意味をご存知でしょうか?
一見「『ウォッシュ』?洗うって意味?」と思われるかもしれませんが、これは「うわべを飾る」「ごまかす」を意味する「ホワイトウォッシュ(whitewash)」という英語の動詞に由来しています。
(ちなみに、この動詞には「白人化する」という意味もあります。原作では非白人種の主人公に映画版では白人俳優が起用される等、「白人化」問題をニュースで見かけたことがある方も多いと思います。)
はじまりは「グリーンウォッシュ」
遡ること約40年前の1980年代、実態はそうではないのにもかかわらず、環境に配慮したように見せかけた企業に対して「グリーンウォッシュ」という批判が寄せられました。これはエコなイメージのある「グリーン」と「ホワイトウォッシュ」を組み合わせた造語です。
例えば、ある清涼飲料の広告がこの画像のように変更されたとします。
灰色の背景と黄色いモチーフつきのボトルから、色を緑色に統一したものへと大幅に変更されていますね。このような色使いは、緑色から「エコ」「環境に優しい」という印象を消費者に与えます。
しかし、その企業が十分に環境に配慮した活動をしていないのにもかかわらず、このように広告を変更した場合はグリーンウォッシュに該当するのです。
その他のグリーンウォッシュの具体例としては、「エコフレンドリー」「ナチュラル」といった曖昧な表現や商品とは関係のない自然風景の写真を用いたり、自社の環境活動ばかり強調して不都合な事実を伝えなかったりすることが挙げられます。
新たな造語:「SDGsウォッシュ」
グリーンウォッシュが「グリーン」×「ホワイトウォッシュ」の造語であることからも想像がつくように、「SDGsウォッシュ」は「SDGs」と「ホワイトウォッシュ」が掛け合わされたものです。
刻一刻と地球規模の社会問題が深刻化している今日、それらの解決に対して積極的な姿勢を示すことが企業にも求められるようになってきています。そこで、一部の企業は実際は無関係の事業を行いながら、SDGsに積極的に取り組んでいるように見せかけて資金を調達しようとしています。これが「SDGsウォッシュ」です。
過去には、日本国内の大手銀行が「脱炭素」を大々的に打ち出しながら、石炭火力への投融資を続けていたことがSDGsウォッシュであるとして批判されたことがあります。
これは環境意識の高い消費者だけでなく、持続的な社会的貢献を行う将来性のある企業に投資するESG投資家の目も欺くため、企業としての信頼を損なう悪質な行為だといえます。
しかし、実はこの言葉には一筋縄ではいかない難しいポイントがあります。
人によって異なる「SDGsウォッシュ」
それは、「SDGsウォッシュ」であるか否かの判断基準が国や地域によって異なるということです。
たとえ企業側が真面目にSDGsに取り組んでいるつもりでも、SDGsウォッシュとして批判されてしまう可能性があるのです。
企業側がSDGsウォッシュに陥らないよう対策を練ることはもちろんですが、消費者側も企業の透明性や提示された情報の信ぴょう性だけでなく、第三者からの批判の内容にも気を付ける必要があります。
終わりに:知ることの大切さ
2020年7月のNature誌の中で、SDGsの「169のターゲットの3分の2は2030年までに達成できない可能性がさらに高くなっており、そのうち10%はさらに悪化する可能性」¹があると指摘されました。
新型コロナウイルス感染症の拡大という予想外の出来事も相まって、当初想定していたよりも遅いスピードになっているとはいえ、今日まで目標達成のために多くの人々が尽力してきたことは紛れもない事実です。SDGsという言葉の知名度が上がっていること自体、ひとつの素晴らしい成果ですよね。
それを逆手に取っているのがSDGsウォッシュ企業なわけですが、消費者である私たちがその存在について「知る」ことはとても大切です。消費者がSDGsウォッシュ企業に留意し、批判的な視線を持つことが結果的にSDGsウォッシュ企業の減少の促進にも繋がるのではないでしょうか。
世の中について知ろうとすること、日常的に自覚を持つこと。
個々人のそういった小さな変化が大きなパワーになるはずです!
¹金森紀仁「128.持続可能な開発目標をリセットせよ―国連が採択した開発目標の3分の2の達成できない可能性-」, 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター, 2020-09-10〈https://www.jircas.go.jp/ja/program/program_d/blog/20200910〉
【参考文献】
-JAPAN SDGs Action Platform, 外務省 〈https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/index.html〉
-SDGsコミュニケーションガイド, 株式会社電通, 2018-06-01〈https://www.dentsu.co.jp/csr/team_sdgs/pdf/sdgs_communication_guide.pdf〉
-SOL SEL「SDGsウォッシュとは?❘SDGsウォッシュのリスクを回避する対策」, 2020-07-16〈https://solsell.jp/works/sdgs-wash/〉